脚本

脚本詳細

『君に。金メダル!』


登場人物

トレーニー(3)、トレーニー(3)母、トレーナー(3)
トレーニー(1)、トレーナー(1)
トレーニー(2)、 トレーナー(2)

ナレーション(女性) (以下は、緞帳の前で演じられる…つもり。)
(場内アナウンス調で)…中の写真撮影は固くお断りします。まもなく開演です。
(間髪を入れずに開演のベル)
失礼しました。いくら何でもまもなく過ぎました。では、あらためて…。(ブザーなる。)

(上手からトレーニー(3)母《以下「(3)母」と表示》登場。次いでトレーナー(3) (3)母に声をかける)

トレーナー (3) あっ、お母さん。斉藤君だいぶ順調だから今日あたり立てそうですよ
トレーニー (3)母 そうですか。そうなんですか。(冷静をよそおっているがうれしさをかくせない。)先生、よろしくお願いします。
(トレーナー(3)、軽く会釈して去る。(3)母、見送って、女性らしくない、いいかえれば男性的なガッツポーズをとり、自然におわって下手へ去る。すれちがうナレーション(男)には「セレブ」風に会釈)
ナレーション(男性) (下手手前、実況風に首からテーブルをつるす。)
(落ち着いた調子で)二〇一二年の夏。世界の人々がロンドンオリンピックの熱い戦いに注目していたころ、日本でも静かな、しかし熱い闘いがありました。
(「二〇〇四年の…」をきっかけに、おごそかに緞帳あがる…つもり。)
(中央にパイプイスにつかまり立ちする主人公のシルエット。
上手手前に腕上げをする一組のシルエット。
下手奥に膝立ちをする一組のシルエット。
それぞれに運動しやすい服装)
(上手手前にスポットあたる。腕上げをする一組)
(民放の空虚な騒々しさを感じさせる調子で。)
ここでは「腕あげ」が行われています。たかが腕あげ、されど腕あげ。腕上げを制するものは、世界を制する。肩まわりの緊張をといて肩こりをとり、自分を自分でコントロールする力をつけます。
トレーナー (2) (ナレーション《男》の耳へ)う・る・さ・い
ナレーション(男性) (「ごめん、ごめん」というようなしぐさ。客席に愛想を振りまきながら退場)
トレーナー (1) いま力はいったね。ちょっと痛いかな。 ここで止まるよ。
トレーニー (1) (うなずく)
トレーナー (1) そう、楽になったね。
トレーニー (1) (再び、うなずく)
トレーナー (1) じゃ、もう少し動かしてごらん。そうそう、上手、上手。
到着しました。もどるよ。一、二の三。
トレーニー (1) (スムーズに動き、腕が床に着く)
トレーナー (1) 起きてみて。肩、どんな感じかな。
トレーニー (1) (上半身を起こす。肩に手を当てながら驚きとともに)
なんだか、軽くなった感じ。
ナレーション 「お約束」どおりの答えありがとうございました。
(上手へのスポット消えると同時に、下手にスポットあたる)
ナレーション(男性) (さっきからそこにいたという雰囲気で。ここは静かな口調で)ここは、膝立ちで、腰だけを前後に動かすことに挑んでいます。障がいのあるなしにかかわらずとても難しいうごきです。
トレーナー (2) じゃ、腰、動かすね。おへその下に手を当ててごらん。そう。そこ前に出すよ。どうぞ
トレーニー (2) (「どうぞ」の声にからだを動かしはじめるが思うようにいかない「あれっ。むずかしいなあ。」というような表情)
トレーナー (2) 背中動いたね。もう一回。
トレーニー (2) (うまく動く)
トレーナー (2) うまい。うまい。よしっ、もう一回。
トレーニー (2) (さきほどより明瞭に大きな動き)
トレーナー (2) そうそう。上手、上手。
トレーニー (2) (うれしそうな表情をみせもう一回自分でやろうとする。)
トレーナー (2) そうそう。それ、それ。 それ、それ、(のあたりから…いつの間にか囃子言葉に変化している)それ、それ…
トレーニー (2) (囃子にあわせて立ち上がりレイザーラモンのように腰を前後に高速で動かす)
トレーナー (2) それは、や・り・す・ぎ!
トレーニー (2) (の言葉にそれまでの勢いを失う)
ナレーション(男性) (下手手前にいる。)
ただいま、お見苦しい場面がありましたことをお詫びいたします。
(上手へのスポット消え、同時に、スポット、センターに。)

次は、立つことを練習をしています。両足に力を入れてのばすこと。腰回りの余分な緊張をゆるめ動かし安くすること。上半身を柔らかくして動きを細かく調整することを練習をしてきました。
(次第に熱を帯びた口調になってくるが、トレーナー(3)の視線にたしなめられ冷静なアナウンスにもどる。)
大地に二本足で立つという人類の歴史上の偉大な瞬間が、いま。ここに。再現されようとしています。それは、獲物をつかむ爪もなく、早くも走れない裸のサルがヒトになる瞬間でもあります。(トレーナー(3)から「話を短くしろ」の合図。だが自信を持って話し続ける。説得力ある口調。)立つことは地平線をみるだけでなく未来をもちそしてふり返ることができる歴史を持つことでもありました。

トレーニー (3) (背をまるめたあぐら座位)
トレーナー (3) 今日は、たってみようかね。
トレーニー (3) えー(と驚く)
トレーナー (3) きのうも、かなりいい線までいったから大丈夫だよ。
トレーニー (3) そんな、先生、人ごとだと思って。
トレーナー (3) (無視して)まず、腰回りゆるめるよ。痛かったら言ってね。
(あぐら座位のトレーニー(3)の背に自分の背中を預ける。)
トレーニー (3) 先生、少し痛い。
トレーナー (3) あっ、そう。よかったね。
トレーニー (3) 先生っ。(抗議というか、あきれてというか)
トレーナー (3) 冗談、冗談。じゃ、もう一回。せーの。そう、そう、そう、そう。
いいよね。もう一回。せーの。そう、そう、そう。

(トレーニー(3)から身を離し、立てかけてあったパイプいすを持ち「さあ、これから大仕事だぞ」という感じでトレーニーの前に置く。それを見たトレーニー、緊張する。)
じゃ、やるよ。
(トレーニーの背後、脇から両手を差し入れてトレーニーの腕を束ねて持つ。そしてイスにつかまり立ちさせる。このときトレーニー(3)はわざとらしさを感じさせない程度に立つことの不安定さ、恐怖感を表現する。)

トレーニー (3) やっぱりこわいよ。先生、やめようよ。
トレーナー (3) そう、じゃ、やめよう。終了!(と大声で)
トレーニー (3) うそ、嘘ですよ。冗談!やりますよ。
トレーナー (3) (見学の人を呼びトレーニー(3)の前のパイプイスに座らせる。)
見学の人 (何を勘違いしたのか、トレーニー(3)に対面するように座り愛想をふりまく。それをあわててトレーナー(3)制止して背を向けて座りなおさせる。
トレーニー (3) (見学の人の愛想につられながらも、必死のつかまり立ちをわざとらしくなくかつ効果的に表現する。)
こわっ。(とトレーナー(3)をみる。素っ気なく無視して顔を正面に向け「ニヤッ」とする。トレーニー(3)はトホホな表情)
トレーナー (3) (イスにつかまるトレーニー(3)の背後にたち、右手は肩、左手は腰に添える。)
じゃ、手を離すよ。(ドラムロールが流れるが、トレーナー(3)気がつき制止する。「そういう場面じゃない」ことをしぐさで抗議する。)
大丈夫。大丈夫。持っててあげるから(と、もう一度、肩と腰に手を添える)
トレーニー (3) それが一番危ないんだな。ぶつぶつ。
トレーナー (3) なにか。
トレーニー (3) いいえ、なんにも。
(をきっかけに、スポットは動きの止まった二人に。舞台とは異なるところから声がひびく。)
(以下の台詞は、十分に間合いをとりながら、しかし間延びしてはいけない)
どうしよう。
こうやってるだけこわいのに…。手を離すなんて…。
トレーナー (3) そう、こわいよね。でもいまの君なら、大丈夫。
トレーニー (3) 本当に立てる?
トレーナー (3) そのために今日までやってきたんだよ。準備は十分。あとは君次第さ。
トレーニー (3) やめてもいい。
トレーナー (3) どうしてもこわいならね。来年の夏でもいいよ。やるかどうかは自分で決めるんだよ。でも…、いまの君なら十分に立てると思うよ。それに…
トレーニー (3) それに…?。
トレーナー (3) たくさんの仲間が…。
トレーニー (3) たくさんの仲間…?
トレーナー (3) そう。病気や障害のために自分の思うようにからだを動かせない大勢の仲間が君を応援しているような気がするんだ。
トレーニー (3) 先生、白いね。
トレーナー (3) うん、白いかもしれない。しつこいけれど、あとは、君の決断だよ。
トレーニー (3) うん。(永遠であり、一瞬でもある沈黙のあと)わかった。
(舞台明るくなる)
トレーナー (3) 膝…まげてごらん。
((トレーニー(3)不安定さもありながらぎこちなく曲げていく。)
(いい感じ、いい感じ。今度はのばすよ。(イスは)ちょっとだけさわるんだよ。いくよ。
トレーニー (3) はーい。
(躊躇いながらも、徐々に手をイスから離そうとするが、なかなか手を離せない。片手づつ離そうと試みるがやはり決心がつかない。)
トレーナー (3) やっぱり、こわい。(と、トレーナーに助けを求めるような表情をするがトレーナーは、トレーニーの目を見てただ一度うなずく。トレーニー(3)トレーナー(3)の思いを知り再び努力をはじめる。)
そう、そう、そう、そう。(トレーニー(3)の動きにあわせて声をかけていく。そしてトレーニーの動きに引き込まれていく)
(立つことを懸命に試行しているトレーニー(3)をみながら。)うまい。うまい。
トレーニー (3) よしっ(短く鋭い声を発して、きっぱり決断してついには手を離す。
トレーナー (3) そうだ。そうだ。(大きくはないが、力の入った声)
トレーニー (3) (動きを自分で調整しながら、同時に、不思議そうにあたりを見回す。そうして、こみ上げる喜びがからだにみなぎりそれが声となるような感じで)
できた。できた。本当にできた。ヤッター。
(危うく倒れかかるが慌ててトレーナーからだを支える)
ナレーション(女性) (会場全体に呼びかける感じで)終了5分前です。
(トレーニーのからだを背後から支えあぐら座位をとらせる。)
トレーナー (3) (トレーニー(3)を労るように)よし、よし、よし。できたね。がんばった。(言葉を探るような表情から思いついた表情へとかわり)金メダルだ。
トレーニー (3)の母 息子…。よくやった。 よくやった。よくやった。(と前とはちがう男性的なガッツポーズと同時に緞帳下りた…つもり。)

動作法 おおみや

住所
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