医療的ケア対象児への動作法

研究発表

第36回日本リハビリテイション心理学会口頭発表

医療的ケア対象児への動作法
(ADLの向上と生理学的な変化)

鈴木 芳宏
(動作法 おおみや)

①血中酸素飽和濃度(SpO2)
②脈拍
③体温
④吸引回数(1日の回数)

1 概要

 医療的ケア対象児の中3女子に訪問で動作法を試みた。肩まわり、首まわりの緊張の改善が結果的に呼吸や排痰の改善を招いた。この事例は、看護師資格を持つ自立活動教諭によるバイタルチェックを継続的に受けていたので上記の変化を生理的な記録からも確認した。

2 事例

①中3の女子。医療的ケアの対象児。生活は全介助。意思表示は自発的な短い発声と文字ボードで行う。トレーニーは手首を保護者をはじめ、担当教員など日常的に接する人が支え指先で文字ボードを指す。そして援助者がその意図を第三者に伝える。
 動作法を実施する前はブレインウエーブ法を日常的に保護者とサポーターで行っていた。
筆者が自立活動の時間に行った動作法で強い緊張から丸まっていた背中が平になったことを保護者は目の当たりにし、さらに、トレーニー自身も楽になったと保護者へ伝えた。そのことが動作法のセッションのきっかけになった。

②動作法は200x年x月から月1回の所属校の保護者が主催する訓練会に参加していた。筆者はスーパーヴァイザーとして参加。2008年4月から訪問でのセッション(隔週)を開始した。2009年4月に現在の所属校に転校した。転校の理由は通学時間が短い新設校を選択したからである。

  1. 家庭での取り組み
    保護者は、現在、あぐら坐位を目標として毎日約1~1.5時間を行っている。股関節の弛め、腰を立てる課題を行っている。
  2. 学校での取り組み
    2009年度の自立活動の時間にからだの弛緩と自力排痰のためうつぶせの姿勢をとるようになった。(4経過概略-e参照)

③動作課題は、肩まわり、首まわりの緊張の改善とした。

  1. 実態:トレーニーは、左肩が前面にはいり耳方向に引きつけている。肩まわり、首まわりの強い緊張が、安定した呼吸を妨げ排痰の困難を招いていると見立てた。
  2. 方法:側臥位での肩緩め、上になった肩を緊 張を確かめながら後方にひいた。また、側臥位での胸屈げ、鳩尾よりやや上部に筆者の腕をあてて支点にし肩を前方に動かし弛めを行った。また、肩上げ、肩下げも行った。

3 変化したこと

① 自力排痰が多くなった。
② 血中酸素飽和濃度SpO2の高い値での安定。
③ 脈拍の低下。
④ 自分の身体・動きを意識できるようになった。
⑤ 緊張が入ることが少なくなったので、大汗をかかなくなった。
⑥ 睡眠の安定。
⑦ 大きな声が出るようになった。
⑧ 嚥下が上手になった。(歯科医の指摘)

4 経路概略

a. 08年5月に入院(/16~6/5)

b. 09年4月に入院(/17~/26)

c. 同  9月に入院(/11~/16)

d. 08年度に発表者の動作法(計9回)
4月(1回) 1月(1回) 2月(5回)
3月(2回)

e. 09年度のうつぶせでの自力排痰の記録(計32回)
4月(1回) 5月(4回) 6月(5回)
7月(3回) 9月(2回) 10月(7回)
11月(3回) 12月(3回) 1月(2回)
2月(2回)

f. 09年11月に食べ物をむせずに嚥下した。

g. ケア・ノートに健康状態等の客観的な記述が増加した。

5 資料について

 資料は、登校時のバイタル・チェックと授業時の吸引回数を記録した医療的ケア対象児のケア・ノートを使用した。記録者は主として看護師資格 を有する自立活動担当教員である。吸引はほぼ同じ担当者が行った。

6 資料について

 08年度のケア・ノートの「連絡事項・特記事項」はバス登校の不安など生活上の出来事を強い緊張と発声で訴える記述が多かった。しかし09年度はそれらの記述が減少し学校から家庭へ授業中の様子や健康状態等の客観的な記述が増加した。

 このことは本トレーニーの肩まわり、首まわりの強い緊張の改善の結果、心理的に安定したと筆者は推測している。

 そして、そのことが自力排痰の回数の増加や睡眠の安定、嚥下が上手になったとの歯科医の指摘、大汗をかかなくなった等のADLの向上につながったと考える。そのことは血中酸素飽和濃度の上昇や体温や脈拍の安定といった生理面の変化からも確認できた。

 筆者は、当初動作法によるアプローチによって呼吸の改善がはかられることを予想したが、他のADLも向上し、それが生理的な面で客観的な裏付けが得られたことに驚いた。

  • facebook
  • twitter

トップへ戻る